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「誰もが役割を持てる社会へ」

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あっぷるぷらす・野中宏美さんが描く、福祉と地域がつながる未来

宮城県石巻市にある株式会社アップルファーム多機能型福祉事業所「あっぷるぷらす」。そこには、障がいのある若者たちが、自分の力を発揮しながら、社会とつながっていける日々があります。

「生まれたすべての人が役割を自覚し、真の幸せを追求できる社会をめざす」

この理念を掲げるあっぷるぷらすで、利用者とともに歩み続けているのが、スタッフの野中宏美さん(通称: ひろみっちさん)です。今回は、合同会社もものわのインターン生・長谷川と安野がひろみっちさんにお話を伺いました。本記事では、野中さんのお言葉を交えながら、その活動と思いをお届けします。



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「“できる”を引き出す場所──アップルプラスが紡ぐ福祉のかたち」

あっぷるぷらすでは、自立訓練や就労継続支援B型といった障害福祉サービスを提供しています。特に、発達障がいや自閉症の特性を持つ10代〜20代の利用者が多く、彼らの“得意”に合わせたサポートを行っています。

「繰り返しの作業が得意な方には、ラベル貼りや選別作業などを任せたり。農業体験や、スタッフ・利用者みんなで外出するイベントもあります。支援というより、一緒に経験を重ねていく感覚です」と野中さんは話します。



看護師から福祉の世界へ

20代の頃、ひろみっちさんは看護師として病院やクリニックに勤務し、小児科やNICU(新生児集中治療室)で未熟児の赤ちゃんをケアしていました。しかし、「その子たちが大きくなった後の姿が気になっていた」といいます。

転機が訪れたのは、福祉施設「あっぷるじゃんぷ」の開設。「障がいのある人の“これから”を見てみたい」と思い、飛び込んだ世界。今では、看護師時代に患者さんと向き合った日々に、深い意味とつながりを感じています。



「誰だお前!」がくれた惹きつけられる体験

福祉の現場を初めて見学した日。自閉症の子どもから放たれた一言、「誰だお前!」。それが、野中さんの心をとらえました。「びっくりしたけど、素直にそうだよね、という気持ちになりました。もっと知りたくなったんです」と笑います。

以来9年間、あっぷるじゃんぷ、そしてあっぷるぷらすの立ち上げにも関わり、利用者とスタッフが共に育つ場所をつくってきました。



「昨日できなかったことが、今日はできた」

あっぷるぷらすでの仕事のやりがいについて、野中さんはこう語ります。

「昨日できなかったことが、今日はできている。そんな小さな変化が毎日起きるんです。それをスタッフみんなで共有して、喜び合う。それがたまらなく楽しい。」

利用者と“同じ目線”で関わることを大切にしており、言葉遣いひとつ、座る位置ひとつにも気を配ります。「自分が笑っていれば、相手も笑う。自分が不安なら、相手も不安になる。私たちは、相手の“鏡”なんです。」


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「売ってる!僕がラベル貼ったやつだ!」

あっぷるぷらすでは現在、合同会社もものわが製造・販売する「杉ハーブティー」の原材料である杉の毬花(雌花)の選別作業を行っています。

「森さん(もものわ代表)からお声がけをいただいたのが1年前。作業を受け入れるときは、リスクがないか、特性に合うかなどを細かく見極めます。」

ただ作業を行うだけでなく、実際に杉の毬花が採れる山に出向き、杉の木に実がなっている様子を利用者と一緒に見に行くことも。その体験を通じて、ひろみっちさんは「山の中である程度選別してくれた方が効率的かも」と提案。信頼関係があるからこそできる、現場からのフィードバックです。

「ラベル貼った商品を実際にお店で見て、『僕がやったやつだ!』って家族に話す子もいます。それが、何よりのやりがいになるんです。」


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福祉と地域がつながる未来へ

杉ハーブティーのコラボパッケージには、利用者のアート作品が使われています。展示会でも発表されたそれらの作品は、見る人の心を惹きつける力を持っています。

「もものわさんが伐採した木を使って、アート作品を作れたら素敵だなと思っているんです。」

「あっぷるぷらすに仕事を任せたい」と思ってもらえる存在になること。そして、利用者の力が地域や社会と自然につながっていく未来をつくること。それが、ひろみっちさんの目指すビジョンです。



福祉は「支援する・される」の関係だけではありません。役割と喜びを共有し合う関係の中に、ひとりひとりの居場所と可能性が広がっています。あっぷるぷらすと、そこに集う人たちの未来が、これからも豊かに育まれていくことを、私たちも心から願っています。

(文・合同会社もものわ インターン生 長谷川京香)



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